「浅草を、まちとしてではなく、“家族”として守り、育てていきたい。」
そう語るのは、浅草で三代続く老舗レストラン「月見草」の四代目であり、浅草ジェニック実行委員長の雑賀重昭さん。
観光地として名高い浅草。けれど、2020年のコロナ禍ではその灯が消えかけた。人の流れが止まり、店のシャッターが下り、町全体が静まり返るなか、雑賀さんの中で、ある強い想いが芽生えた。
「このまま浅草の灯を消すわけにはいかない。自分がやらなきゃ、誰がやるんだ」
老舗の看板に甘んじることなく、新しい挑戦を次々と打ち出す雑賀さん。SNSでの発信、地域を巻き込んだコラボレーション、そして「ミス浅草ジェニック」プロジェクトの立ち上げ。そこにあるのは、ただ自分の店だけが儲かればいいという発想ではなく、“まち全体が盛り上がれば、地域に再び活気が戻る”という確信だ。
伝統を守ることと、進化を恐れないことは、決して矛盾しない。
「たとえ老舗でも、あぐらをかくことなく、挑戦を続けることが浅草らしさ」と雑賀さんは語る。
そしてもう一つ、彼の原動力になっているのが、次の世代への想いだ。
浅草神社と連携して実施した「子供花火大会」では、250人以上の子どもたちが夜空に花を咲かせた。
「ただのレクリエーションではなく、“あの時の花火、楽しかったよね”と語り合える仲間たちが、このまちの次の浅草人になる」
「浅草には“人”という宝がある。文化も伝統も、それを継いでいく“人”がいてこそ意味があるんです」
自分が父や祖父から受け取った“まちを守るバトン”を、今度は自分の子どもや孫、そして地域の若者たちへ繋いでいく。
それが雑賀さんの、浅草への覚悟であり、願いだ。
最後に、こんな言葉を聞かせてくれた。
「浅草ってね、まちじゃなくて“家族”なんですよ」
灯を絶やさぬように。その炎を、次の時代にも届けるために。
雑賀さんの挑戦は、今日も静かに、しかし力強く続いている。